「参ります」の意味と例文と書き方

「参ります」という言葉は、ラ行五段活用の動詞であり、謙譲語の「参る」の連用形である「参り」に、丁寧の助動詞「ます」が付いた形です。この参るという言葉は、貴人に対する下の者の動作の謙譲語という定義がなされておりますが、現代においては主に3種類の使い方がされるのが一般的となっています。

 

まず最初は「行く」の謙譲表現としての用法です。自分が「行く」という行為をする場合に、それをへりくだった形で表現する場合に用いられます。聞き手と動作の及ぶ相手とが一致している場合に用いられるのが特徴です。

 

目上の人に呼ばれた際に

「はい、ただ今参ります。」などと言ったり、会社に来客があって、担当者を呼び出ししてほしいと言われた場合に、「直ちに参りますので、どうぞこちらにお掛けになってお待ちください。」と伝達する使い方がそれに該当します。

 

2つ目の用法は、補助動詞である「行く」・「来る」の謙譲表現としての用法です。これは「落ちてくる」・「生きていく」などの補助動詞「いく」・「くる」を、相手に対してへりくだって丁寧に言うときの謙譲表現です。

 

丁寧語的な用法として使用されるケースが多いのが特徴です。例としては、「今後も社業発展のために尽力して参ります。」といったものや、「今、コーナーを回って参りますのが、佐藤君のクルマです。」といったもの、あるいは「このバスは市役所まで参りますでしょうか。」といった使われ方がされます。

 

最後の用法は、「かなわない」・「閉口する」などの意の丁寧表現としての用法です。相手の力や能力に負けて降参したということを示したり、事態に対応することができずに困惑したり閉口したりしている状態を示す際に、婉曲的な言い回しで伝える丁寧な表現として使用されるのが特徴です。「いつもながら、杉浦女史の鋭い突っ込みには参ります。」「彼のせっかちさには参ります。」といった使われ方がされます。

 

こうして幅広く使用される言葉ではありますが、誤用も多くなっていますので注意が必要です。特に、この語が謙譲語であるにも関わらず、「参る」という言葉を丁寧語であると勘違いすることによる使われ方のミスは、聞き手にとっては大変な違和感を覚えるものですし、また、使い手としての正確性ですとか日本語の理解度に対する信頼性に疑問を持たれてしまいかねないため、十分な注意が必要です。

 

誤用の例としては

例えば目上の先生がどちらかに向かわれる際に、それを表して「山田先生がそちらに参ります」という使い方をされる方がいらっしゃいます。しかしこれは単純に「参る」という言葉を丁寧な言葉とだけ認識しているから起きる間違いです。

 

謙譲語として目上を立てる際に用いるという認識があればこうした使用上のミスは防げますので覚えておかれると良いでしょう。

 

ビジネスシーンにおいても、こうした誤用は多々見受けられます。例えば、電話で面談のアポイントをしている場面で、相手の来社時間を確認しようとして、「何時に参られますか」と聞いてしまっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

先ほどから説明しておりますことをご理解いただいていらっしゃる方はお気づきかと思いますが、これは当然誤用となります。相手に対して敬う気持ちを表そうとしてむしろ相手の行動に謙譲語を用いてしまうという結果になっています。

 

これでは大切な取引先に対して不快な思いを抱かせてしまう可能性さえありますので、いくらこうした使われ方が広く見受けられるようになっているとはいえ、本来の使い方からすれば、真逆のことでもありますので、避けなければいけないものとしてお考えください。

 

言葉は時代とともに変化するもので

過去には誤用とされていたものが、時とともに市民権を得るというケースもあります。例えばいわゆる「ら」抜き言葉などは、今でも聞き苦しいと感じる世代が多い反面、特に若い世代においては、むしろそちらの方が聞きなれている分違和感を感じずに済むという事態も起こっています。

 

しかしながら、美しい日本語を使い続けることは、自分自身の教養を高め、歴史の中でその言葉が果たしてきた役割を継承することにもなります。立ち居振る舞いがいくら美しいといっても、口から発せられる言葉が正しくないものであったら、それまでの評価を大きく損なう恐れもあります。

 

「参ります」という言葉は、日常のいたるところで耳にします。特にビジネスや学業において師弟関係にあるような場合は、頻繁に聞き、また自分でも発する機会が多い言葉です。だからこそ、先に述べました3種類の使われ方をよく理解したうえで、正確な使い方ができるように意識していくことがたいへん大切な心がけとなるのです。

 

「行く」の謙譲表現、補助動詞である「行く」・「来る」の謙譲表現、そして「かなわない」・「閉口する」などの意の丁寧表現という3つの主な使い方をマスターし、適時適切なタイミングと用法を行うようにしたいものです。

 

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