ノンフィクションの書き方
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フィクションとノンフィクション
小説のことを別名でフィクションとも言っているわけですが、これは、小説というものが現実の世界で起こった出来事ではなく、作家がその想像力によって作り上げた虚構の世界の物語(フィクション)であるからです。
この虚構の世界を描いた小説という文学作品に対して、ノンフィクションとは現実の世界に起こった出来事を書いた文学作品、ということができます。「事実は小説よりも奇なり」という格言があるくらいですから、現実の世界には、過去にも現在にも、実に驚くべき出来事や奇奇怪怪な事件などといったものが溢れています。
ノンフィクションの有名な題材とは
たとえば、夢の豪華客船と言われ、絶対に沈まない不沈船とされていたタイタニック号が、何とその初航海で氷山に衝突して沈没してしまったために、このニュースはたちまちにして全世界を駆け巡り、今でも史上最大の海難事故となっているこの悲劇は、世紀の大惨事として、いまだに世界中の多くの人々に記憶されているのです。
そして、このタイタニック号の沈没から少し後、まだ旅客機というものが発達しておらず、飛行船というものが空の旅の主役であった時代に、ドイツのツェッペリン飛行船「ヒンデンブルグ号」がニューヨーク郊外で着陸寸前に爆発炎上し、多くの犠牲者を出してしまった時も、このニュースが全世界を駆け巡ることとなって、再び世界中の人々を驚愕させることとなったのでした。
この海と空で起こった世界史上でも未曾有なものとなっている二つの大事件、というものを思い浮かべてみるだけでも、小説家の想像力を遥かに超えた大事件というものが、現実世界には紛れもなく存在している、ということを実感することができるでしょう。
このために、わざわざ想像力を働かせて虚構の世界を創り上げて物語を展開しなくても、このように、現実の世界には文学作品として描くことのできる題材がいくらでも存在している、と言うことができるのです。
事実、このタイタニック号とヒンデンブルグ号の悲劇は、その後何度にもわたって、多くのノンフィクション作家が繰り返し取り上げている必須の題材、となっているのです。
ノンフィクションの題材はこうした大事故ばかりではなく、まだ記憶に新しい東日本大震災や阪神大震災といった大規模な自然災害、第一次世界大戦や第二次世界大戦を始めとして今も起こっている数々の戦争とその悲劇などがあります。
また1970年代に起こった二度のオイルショック、第二次大戦の遠因とも言われているニューヨーク発の世界大恐慌、ブレトンウッズ協定による米ドル固定相場制の廃止といった世界経済上の大事件などなど、世界の歴史上であるいは今現在の世界で起こっているあらゆる出来事が、その対象となり得るものなのです。
書き方の違い
では、このノンフィクションという文学作品を書く際には、虚構の物語である小説というフィクションを書く場合に比して、どのような違いがあると言えるのでしょうか。
まず第一に、ノンフィクションとは現実世界には存在していない虚構の物語ではなく、この世界に歴然と存在した、あるいは現に存在している出来事について書くものですから、その歴史的なあるいは現実の事実に反したものであったり、それが歪曲されたり誇張されたりしたものであってはならない、ということがあります。
これが虚構の世界である小説であれば、その作家がどのような書き方をしていてもかまわないわけなのですが、事実にもとづかねばならないノンフィクションの場合には、事実に反したり、歪曲したり誇張したりしてはならない、ということがその書き方としての大原則なのです。
このために、ノンフィクション作家には、何よりもまず最初に、書こうとする題材についての徹底的な調査、というものが要求されることになるのです。
もちろん、小説である場合にも、その作品にリアリティを持たせるために、そのテーマについての綿密な調査を行ってから作品を書いている、という小説家もいるわけなのですが、これがノンフィクション作家である場合には、単に作品にリアリティを持たせるということ以上に、事実と違っていてはならないという最優先の事項があるわけで、この点で、ノンフィクション作家というものは、ニュース報道を行う新聞記者や放送局のニュース取材担当者などと同じ立場に立っている、ということもできるわけです。
報道取材とノンフィクション作家の違い
ただし、新聞記者や放送局のニュース取材担当者とノンフィクション作家とが違っているのは、前者があくまでも報道としての取材を行い、それを新聞記事やテレビ・ラジオのニュースとして報じる者であるのに対して、ノンフィクション作家はそうした現実世界の出来事を題材としながらも、それをさらに掘り下げたものである作品として、その題材を描き出す者であるという点なのです。
この点においても、新聞記者や放送局のニュース報道担当者の書く原稿と、ノンフィクション作家の書く文章とでは、その書き方もまた違ったものになってくるわけなのです。
記者や報道担当者には、あくまでもその出来事をできる限り客観的に記して報じる、というニュース報道のセオリーに則った原稿の書き方が要求されるのに対し、ノンフィクション作家には、その出来事の事実に立脚しながらも、その背景や要因といったものにまで踏み込んだ視野に立っての、より広く深い観点からの書き方というものが求められるからです。
こうして観ると、ノンフィクション作家というものは、虚構の物語である小説というフィクションを描く小説家と、ニュース報道を行う新聞記者や放送局の報道担当者との中間に位置していながらも、小説家ともニュース報道を行うジャーナリストとも異なる文章の書き手、すなわち現実世界あるいは歴史上の世界の出来事をその題材として、あくまでもその事実に立脚しながらも、その背景や要因にまでも踏み込んでの視野から捉えた文章作品の描き手である、といった位置付けができるのではないでしょうか。
従って、その文章の書き方というものもまた、その文体ではなく、作家として書き手としての書き方のスタンスとして、小説家ともまたジャーナリストとも異なるノンフィクションとしての独自のもの、となっているのも至極当然のことと言えるのです。